頭・顔・性格はもちろんよく。
さらに家柄もトップに位置し、
ザフト軍のエリートときた。
そんな俺への周りの評価は
つねに”完璧”だった。
ひがまれる事はあろうとも、
(イザーク等がいい例だ。)
嫌われたり、見下されたりすることは
なかった。
それは女の子になると
さらに一入で。
とりあえず、順風満帆な
人生を送っていたわけだ。
だが、『人生とは小説より奇なり』
とはよく言ったものであり、
そんな俺にも例外が現れたんだ。
ビターガール
*前半*
「「「アスラン先輩〜っvv」」」
アカデミーでの特別講義を頼まれた
その帰り道、
校門を通り過ぎようとした俺を、
黄色い声が止めた。
「またか」とは思いつつ、
振り返る。
そこには、4,5人の女の子がいた。
「アスラン先輩の講義、とっても面白かったですっ!」
「そうそう!むしろいつも先輩に
授業してほしいくらいですよ!」
あっという間に、わっと周りを囲まれ、
マシンガンのように口を動かす彼女達。
嘘つけ。
俺の話なんて本質的には何も
聞いてないくせに。
そんな事を思いつつも、
とりあえず、体面上の笑顔を作る。
「あ・・あぁ、・・・ありがとう。
嬉しいよ。」
無難な言葉で濁し、
さっさとそこから抜け出そうとするが・・・・
「アスラン先輩!もう上がりですよねっ!?
私達と遊びません?」
「まだ時間あるし・・是非そうしましょうよ!
色々お話も聞きたいし!」
この申し出には
さすがの俺もぴしっとなった。
冗談じゃない。
講義するのだって
上司命令が下ったからで・・・
本来なら絶対にこない。
というか、俺は早く帰りたいんだよ!
軍人になる人間なら
そこまで見抜けっ!!
遊ぶ暇があるなら
訓練しろ!!
今日、お前らの訓練を見たが
酷いものだったぞ!!
・・・・・とかとか思っていても
言えるわけない。
いや、気を使っているとかでなく、
後々面倒くさいからだ。
泣かれでもしてみろ。
それこそ帰るに帰れなくなる。
「いや・・・今日は今から明日の
講義内容を予習しないといけないから・・・」
適当な言い訳を口にしながら
ゆっくり彼女達の輪から脱出する。
・・・明日もあると思うと
本当厄介だが、
明日で終りだ。
頑張ろう。
「え〜・・・先輩なら予習しなくても
平気ですよぉ〜」
「そうですよ。適当でいいんですよ!そんなの!」
「それより私達と親睦を深めましょうよー!」
むっ。
これには流石の俺も
顔が引き攣ったと思う。
だが、俺は頑張った。
「いや、そういうわけには・・・」
「みんなー!よかったまだいた〜!」
明るい声が後ろから響く。
ぱたぱたと、俺を囲んでいる
女の子達に手を振りながら走ってくる。
「教官が呼んでたよ?
再テストがどうとかこうとか・・・。」
その女の子の言葉に、
彼女らは顔を顰めた。
「あ〜・・それね。いいわよ、別に。
あのテストは落第しても、卒業できるし。」
「ねー。そうだよね〜」
「そうそう。みたいにきっちり
取るほど私達優等生でもないしね〜。」
成程。
今来た女の子はというのか。
しかし、その言い方はないんじゃないだろうか。
あまりに失礼だろう。
それに落第しても卒業できるからといって
訓練を受けないのは、
俺たち軍人を馬鹿にしている。
今やれる事をやらなければ
待っているのは死だけなのに。
(・・・・・さすがに、これは温和に運べないな)
少し怒ってやろうと、
口を開こうとするが・・・
「あはは、優等生とかじゃないよ!
ただ、この講義とっとくと、クルーゼ隊入隊に
有利だって聞いたから・・・・」
「えっ!?」
「それってマジ!?」
「あはは、まじまじ。大マジ。
まだ間に合うと思うから行ってみたら?
教科書の第6章あたりが中心に出ると思うよ。」
は彼女達に
にこやかに応じる。
なんっつーか。
お人よしだな・・・。
この子。
あれだけ言われといて、
情報まで与えてる。
だが・・・・
クルーゼ隊に有利って・・
「サンキュー、!
持つものは頭のいい友達ね!」
「アスラン先輩!すみません!
そういうことなので・・・」
「あぁ。全然構わない。
落とさないようにがんばれよ。」
俺は出来るだけ当たりさわりない
言葉で彼女らを送り出した。
本音では落としてほしいくらいだが。
彼女らがまるで嵐のように過ぎ去った後、
という少女もその場を後にしようとする。
「あ・・・君!」
何やっているんだ・・・・
思わず、彼女を止めてしまった。
は少し面倒くさそうに
振り返る。
・・?
あれ?
なんかさっきと雰囲気が違う?
と・とりあえず、
何か言わないと・・・!
「・・・・・クルーゼ隊に有利な単位・・と言っていたが、
なんの単位だ?そんなもの・・・」
「ありませんよ。」
「へっ!?」
「クルーゼ隊は新鋭隊ですよ。
ずば抜けて優秀であっても入隊は難しい。
たかが、単位で有利になるわけないじゃないですか。」
「・・・・・・・」
「どう足掻いたって、彼女らには
無理ですよ。」
「・・・・・・・・なんで・・・」
俺は、思わずどもった。
彼女から吐き出される
言葉に、目を見張ってしまう。
そんな俺を嘲け笑うような
微笑を彼女は浮かべる。
「・・・・貴方が迷惑そうにしてたからですよ。
さっさと帰りたいだろうな・・と思ったんで。
・・・・出過ぎた真似だとは思いましたが。」
このセリフには、先程の驚きよりも
驚いた。
・・・・・・滅多に俺の考えている事、
知られないのに・・・・。
というか、うまくやってきた
つもりだったのに。
「・・・・いや、ありがとう。
助かったよ。」
その俺のセリフに
彼女は微笑んだ。
それには、単純に
(・・・・可愛い・・・)
と感じた・・・が。
「勘違いしないでください。」
「え?」
返ってきたのは冷たい返答だった。
「張り付いたような嘘の言葉に
苛々してたんです。」
「!?」
「中途半端な言葉は何よりも卑怯ですよ。
ザラ先生。」
彼女は微笑を浮かべたまま、
俺を隣を通り抜けていく。
その彼女の言葉には
流石の俺も頭に血が上った。
なぜ、そこまで言われなきゃ
いけないんだ!!
「・・・・・・・っっ!!
そ・・・そんなの君に言われたくない!!
君だって・・・俺と同じことしてるじゃないか!」
その怒鳴り声に、
彼女は足を止め、俺のほうへと振り返った。
「一緒にしないで。」
「!?」
「私は、自分の意図通りに人を動かす為にやってる。
・・・・・貴方のは自分を良く見せたくて
嘘をついてるんじゃない。」
「なっ・・・」
「別にそれは誰にでもあるけど・・・
貴方のは重症ね。そこまで自分を良く見られたい?」
「っつ!?」
「私は貴方みたいな人が
嫌いなだけ。
・・・・・おっと、喋りすぎたか。」
そこまで言うと
彼女は口を押さえる。
だが、悪びた様子はない。
後ろめたさもなにも
感じさせない。
まるで、100%正しい事
だと思っているかのようだ。
対しての俺は
初めて浴びせられる言葉に
不覚にも固まっていた。
「じゃあ、私はさっさと帰りたいんで、失礼?
・・・あ、喋りすぎたついでに、もう一つ。」
彼女はそう言うと、
今度は嘲るような微笑ではなく、
どちらかというと、
心配そうなそんな微笑で、
「・・・・少しは、本音を出さないと貴方の場合、
ストレスが溜まりすぎて駄目になりますよ。
・・・・・・・程々に。」
それだけ言うと、
彼女は颯爽とした足取りで、
校門を通り、歩いていった。
彼女が去った後も、
俺はしばらく呆然としていた。
そして、本当に意味が解らないが、
本当に不覚というか、
馬鹿だとしか言う言葉がないが、
嫌いだと言われたのに、
彼女の姿や言葉が頭から離れない。
「・・・・勘弁してくれ・・・・。」
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一応・・・伽羅様の10万ヒット企画のリク夢です・・。
な・・・ながらくお待たせしました・・(逃げ腰)
てか待たせすぎです・・。確かリクを受け取ったのは
一昨年の9月ごろ・・・だったと思われ・・・。(*△*)
リクも『実際は黒くて確信犯なのに、ことごとく邪魔が入ってしまう、
ちょっとへたれなアスラン』
な感じだったのですが・・・。
え?黒くないじゃん!
むしろへタレなだけじゃん!!
って感じです。
いや・・あのですね?
これはですね?
将来的には、きっとそんなアスランになるだろうな・・
的な夢でして・・・(汗
すみません・・・!!Orz
私の実力不足です!!
お詫びにといってはなんですが
四部構成にしてみましたので、
それで勘弁してくださると嬉しいです・・・!!!
伽羅様には『たねのほし』設立当初よりお世話に
なっておりましたので、閉鎖する前に
意地でもUPしようと頑張った作品です・・・っ
少しでも気に入って下さるとありがたいのですが・・・っっ!!
2007/08/19
更新日 2008/04/01 惶月 奏(おうづきかなで)