恋のサクラサク。


一応、私もこの状況らしいですが。




なんだろう。

この状況。














ム。
             ―第14話














チチチッ・・・・


ぼんやりとする視界。

かすかに光を感じる。

雰囲気が柔らかい。



・・・・朝の気配だ。


私は、ゆっくりと重たい瞼を
持ち上げる。



「・・・・・?」




ぼんやりと浮かび上がるのは
いつもと違う天井。

いつもより・・・格段に豪華だ。

そして私が寝ている下も、
いつもより全然ふかふかで気持ちがいい。

「・・・・・・・・?」

私はぼんやりと首を捻った。

こつん。

何がが私の頭にあたる。

なんだ・・・?


ぼけーっと、ゆっくり横を向くと・・・・・


そりゃあ、もう相当美麗なお顔がありまして。

流れる綺麗な蒼い髪。

色白の肌。

それを引き立たせる、長い睫。

筋の通った鼻に、上品な口の形。


まるで、神様が特別に
創ったみたいだ。


だけど、私はこの人を知っている。



「なんだぁ・・・あすらんかぁ・・・・。」

私はぼんやりとそう呟いて、
また瞳を閉じる。

そっかそっか。

あすらんか。

うん、アスラン。

え?・・・・・・・アスラン?


って・・・・


「なんでやねーーーんっっっ!!!」



私は一気に頭を覚醒させ、
勢いよく起き上がる。

・・・いや、正確には
『上がろうとした。』


何故か体が起き上がらない。


「・・・・・・っっ!?」

隣のアスランに、がっちり
抱き締められているからだ。



何故に!?

なにゆえ?!

何よ!この状況!!!


多分、服はばっちり着てるから
何もなかった!


だけど、どういうことよ!?



叫んでアスランを起こし、離して貰おうと
したが、あまりにも幸せそうな寝顔だったので、

それははばかられ・・・・。


というか、寝顔は歳よりも幼く見えて・・・

その・・・


(・・・可愛い・・・・っ)


いつもは黒くて変態なのに。


あのアスランの頭を抱き締めたら
いい感じにドキドキで、いい感じなんだろうなぁ・・・
(起きたばかりの為、言っている事に洗練さがない。)

って・・・

はっ!!

いかんいかん!!
そういう場合じゃない!!


私は必死で記憶のカケラを
拾い集める。


えっと・・・

確か昨日はあのまま、アスランの自宅で
ご馳走になり・・・・
(アスランのご両親は今海外らしく不在だった。)

『そろそろ帰るか』ってトコで、
アスランにごねられ、取り留めのない話をしたり、
読書をしたりして過ごして・・・・


あれ?

記憶がない。

そこで途切れてる。


ってことは・・待てよ?

うとうとして寝ちゃったって事・・・?


いや、そこは重要じゃない。

問題は・・・・・・


私はその考えに行きつくと、
冷や汗をだらりとかく。


そして・・・・・


「アスラーーーーン!!!起きて!!!
起きて起きて起きて!!!」

起さないように・・・とかいう気遣いは
忘却の果てへと消えた。


「・・・・ん・・・んん・・・・っ」

その大音量の声に、
アスランは不快そうに眉を顰め、
小さく唸る。


(やだ・・・vなんかエロい・・・っv)

とか変態ちっくなこと
思ってる場合とちゃうねん!!

私は自分の頭を心の中で
ハリセンで殴った。




「・・・・あ・・・だぁ・・・・。」

ふにゃぁっと笑う彼は
そりゃもう・・・もう・・・!!!


だけど、そう素直にも
悶えられない状況。




「アスラン!!いいから起きて!!
どうしよう!?今、朝だよね!?」

「・・・ん・・うん・・・朝・・・だけど・・・?」

そこまで寝起きが悪そうな
彼じゃない。

早くも覚醒してきたようであり、
目をパッチリ開け、はっきりした声音で
そう言った。

私をがっちり抱き締めてはいるが。



「ど・・・どうしよう!?
わ・・私む・っむむ無断外泊しちゃった・・!」


私は泣きそうになりながら、
震える声で彼に訴える。

どうしよう・・・!?

絶対に、親は私の友達に
電話をかけまくっている。


だから、無断外泊・・・ってだけでも
罪深いのに、友達の家に泊まった・・・っていう
言い訳も通じない・・・っ!


なにが起こるか解らない・・・っ。

特にお父さん・・・!!
怒られるとかそういう次元じゃない!!


「・・・・あぁ。」

そんな私とは相反して、
アスランはたったそれだけで
終わらした。


「『あぁ』!?『あぁ』って・・・!!
人事だと思って・・・!!どうするのよ!?
勘当でもされたら!!!」

いや、そこまではないが、
きっと相当酷い状況になる事は、間違いない。

「大丈夫。そうなったらすぐにでもザラ家で
養ってあげるから。というか、すぐにでも籍を
入れて・・・・」

ばしっっ!!!


私はふざけた事を抜かしている
アスランの腕を乱暴に振り払い、

すばやく起き上がり、
無駄に広いベットから飛び降りる。


「とりあえず、一刻も早く帰らなきゃ・・・!」

もしかしたら、私がいないことさえ
運よければ気づいてないかもしれない!

幸運にも、色々なことがあって、
昨日は部屋にヒッキーだったし。


ぐいっ


しかし、私の体はすぐに
アスランの腕の中へ戻ってしまった。

アスランの膝に座っている
形だ。

お腹辺りに、アスランの腕が回されている。


「ちょっ・・・!!アスラン!!
離しなさいよ!!これは一刻を争う・・・・」

「むしろ籍に入れられる状況になったら
いいんだけど・・・・安心して。そうはならないから。」

「へ?」

「昨日、きちんとの家には連絡を入れたよ。

さん生徒会の合宿を忘れていて、偶然、街で会ったので、
そのまま連れて来てるんですよ。さん自分で連絡するみたい
だったのですが、疲れているのか、もう寝ちゃってて・・・
ですので、代わりに僕が連絡させていただいてます』ってな。」

そのアスランのセリフに
驚きつつも、私は安堵の溜息を吐く。


「・・・・よかった・・・・。・・・で、親は何て?」

「生徒会に入ってるのか!って舞い上がってた。」

「・・・・・・・・・」

どうせ、私は平凡な子ですよーーだ。


まぁ、一応は最悪の事態は
免れたわけだ。



「・・・・なんで、私の連絡先解ったの?」

素朴な疑問を尋ねると、アスランは
「あぁ」と言って・・・


「ザラ家に出来ない事はないよ。」

にこっと微笑む。

そのセリフには嫌なものを
見るようにアスランを見詰めた。

そんなの視線に、
アスランは苦笑する。


「冗談冗談。一応俺生徒会長だからな。
コンピュータにデータは入ってるんだ。
・・・・まぁ、の場合はクラス連絡網だけど。」

なるほど。

そういえば同じクラスでした。



はーーーっとは安堵の溜息を
吐きながら、アスランにもたれかかる。

それに、アスランは嬉しそうに
ぎゅっとを抱き締める手に力を入れた。


「・・・・・で。」

「うん?」

ちゅっと私の頭に口付けてくるアスランを
肘でみぞおちを殴り、アスランの膝から降りる。
(その瞬間、『うっ』とうめき声が聴こえた。)


はアスランの正面に座り、
眉を顰めて問いかける。

「なんで・・一緒に寝てた訳?」

うたた寝してたのなら、
起してくれればこんな焦らずに済んだのに。

・・・いや、それは百歩譲っていいとしても、
何故に、アスランが隣で寝てるのだ。


「え?昨日がトランプをしてたら
寝入っちゃって。あんまり可愛いから起すのも
なんだし・・・って思って・・・・・」

「で?」

「俺のベッドにそのままお姫様抱っこ
して運んで・・・・」

「ちょ・・・お・・おおお姫様だっこ!?」

先が聞きたかったので、先程の『あんまり可愛いから』
とかはスルーしてきたが、見過ごせない単語だ。


それにアスランはけろっとして
答える。


「あぁ・・・うん。もしかしての憧れだったりする?
じゃあ・・・・もう一回おきてるときに・・」

とかふざけた事を言って、目の前の
手を伸ばすアスラン。

その手をぱしっとは叩き・・・・

「ちっがうわよ!!よくもそんな恥ずかしい事を・・・っ!!
ま・・まぁ・・今それはいいよ。で!?」

手を払われた事に、少し不満顔の
アスランだったが、仕方なく話を進める。


「それで、そのまま一緒に寝た・・・
ってだけだけど?」

「い・・いい一緒に・・・って・・。
このお屋敷いっぱいベッドあるじゃない!!
なんでわざわざ・・・・っっ!!」

そうだ。この屋敷には数え切れないくらいの
客間がある。

しかも・・しかもだ!!


「それに・・アスランの部屋には立派なソファーがあるんだから、
そこに寝かせてくれればいいじゃない!!」

そういい募るに、
アスランは瞳を半眼にさせた。

・・忘れてないか?」

「な・・・なにをよ・・・っ」

「俺達、”恋人同士”なんだぞ?
こんなおいしいシュチュエーションなんて滅多に
ないのに、どうしてそんな事しなきゃならないんだ。」

「・・・・っ・・・だ・・・だからって・・・・!!」

まるで至極当然のように
拗ねるアスランに、流石の
言葉を詰まらせる。


確かに、ある意味アスランの言っている
ことは正しいかもしれない。

しれない・・・が!

やっぱり認めちゃいけない気がするのも
事実でありまして。


「〜〜〜〜〜っ帰るっっ!!!」

は、これ以上言い募っても
頭脳明晰なアスランに敵うわけない・・・と
判断したのか、

ベッドから立ち上がるが・・・・


ずぼっ

目の前の男がそれを
許してくれるはずもなく。

今度は、体ごとアスランへと
引き付けられた。

その反動で、アスランが
背中からベッドへ倒れたため、

見ようによっては、
アスランを押し倒しているように見える。


「・・・ちょっ!?」

「傍にいたいんだ。」


文句を言おうとしていただったが、
不意に真面目に表情を真面目にされ、
呟かれた言葉に、口を閉じる。


「・・・嬉しいんだ、一応だけど思いが通じて。
ずっと・・・夢見てたから。
がこっちを見てくれるのを。」

とかとか至近距離で、緑色の視線に真っ直ぐ
射抜かれて・・・

『帰る』といえる人が居たら
是非お会いしたい。


(顔がよすぎるって問題よ。)


逆らえなくなる。

寒いセリフすらも
彼を飾るオプションと化すのだから
本当に性質が悪い。


「・・・・はぁ・・・。解ったよ。
・・・じゃあ、アスラン何がしたい?」

どこかに出かけたいの?
は諦め半分にアスランに問う。

すると、アスランは今までの儚げな美少年はどこへ?
・・・と言いたくなる狼の貌でニヤリ・・・と笑った。


「もちろん、このままを食べた・・・」


もちろん、その要求が呑まれる
訳がなく。


どかっっ!!


「う・・・っ・・・くぁ・・・・・!!」

本気で蹴られちゃいけないところに
強烈な蹴りがお見舞いされた。

そして・・・


「やっぱりアスランと恋人なんて
やめる!!!!!」


完璧にへそを曲げてしまったお姫様に、
アスランがこの後、必死でフォローしたのは
言うまでもない。









     ねくすとすとぉりぃっ→


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あれ?

両思いになったんだよね・・・?

何だか、今までと書いている
感じが変わらないような気が・・・・っ

気が・・っ(汗)




      2007/11/18
更新日 2008/03/30  惶月 奏(おうづきかなで)