私にも生まれて初めて、

”かれし”というものが出来たわけですが。


一般に言う”初彼”とかいう可愛いもの
ではないような気がしてしょうがないのです!


むしろ悪魔に騙されて
娶られた感がひしひしと・・・ッ












ム。
             ―第15話












ざわざわ。

朝、

一番人が多い時間でもないのに、
登校中の人々は私達を見ている。

私はその好奇に満ちた(一部悪意に満ちた)視線に
耐え切れずに、口を開く。


「アスラン。」

「ん?」

「悪いんだけど、離れてくれない?」


ぴったりとくっついているアスランは、
むっと眉を顰める。


しかし、私が本当に困っている
という事を感じ取ったのか、

溜息を吐き、「わかった」と呟くと、
私の腰に回していた手をほどき、
0距離から、私との間に30cmほど距離を作った。

それに、私はほっとするが・・・・


「あ、。ここ跳ねてるぞ。」

くすっとアスランは笑い、

私の顔を覗き込むように
自分の顔を近づけ、私の髪を撫でた。


その瞬間の周りの
声にならない叫びといったら・・・

それは凄まじい物、
という以外、形容することはできない。



「・・・アスラン。」

「何だ?」

「悪いんだけど、離れてくれない?」

「え?だって、さっき・・・・・」

「半径50mくらい。」

「・・・・・・・・・・・却下。」



ちっ。

やはり・・・なお言葉に
思わず私は舌打ちをする。




私・・・

選択を早まってしまった
気がするわ・・・。


















「・・・・お、おはよう。」

教室に入ると、気まずそうな表情で
キラ君が話しかけてきた。


そういえば、彼とは気まずいままだった。



「おはよう、キラ君・・・えっと・・・
・・・・その・・・・・・・・この前は・・ごめんね?」

私は、自分の机に鞄を置きながら
キラ君に謝罪を述べる。

キラ君も酷かったとは思うけど、
あれはイタズラの一種だったわけで。

今思うと、そこまで怒る事じゃなかった・・・と思う。

あれをキッカケに
自分とも向き合えた間もあるし、

結果オーライだ。



すると、キラ君は瞳を見開いて、
首を左右に激しく振った。

「いや!!そんな・・・
僕こそ・・・ごめん。」

彼も本当にすまなさそうに
謝ってきた。


顔がかわカッコいい系なだけに
なんだか・・・こう・・・しゅん・・・とされると

きゅんvときてしまう。


(やっぱり・・可愛いわね・・・この子・・・。)

冷静に観察すると、
血が頭に上っていた時よりも3割増し可愛い。


こりゃ、皆が誤解するはずだわ。

今も外野の皆さんは、
昼ドラも真っ青の愛憎劇を期待して
私達を見ている。


これは、皆様の妄想がヒートアップしないうちに
誤解を解かなければ、学園新聞の一面を飾りかねないわ。



「じゃあ、はいっ!」

「え?」

差し出された私の手に、
キラ君はきょとんと見詰める。


「仲直り!」

「・・・・・・・・っ・・・うん!」

キラ君は一瞬驚いた表情をしたが、
次の瞬間には、ぱぁっと花が咲いたような笑顔を見せ、
私の手を掴んだ。

このアクションは、外野の皆に
誤解を解いてもらう為にしたんだけども・・・ッッ



キラ君・・・マジ可愛い・・・!!

元々甘い顔立ちなのに、
笑うと物凄く可愛いっていうか・・・

綺麗・・・。




ヤバイ。

(一応)恋人が出来て2日目・・・。


初っ端から浮気しそうです。(待て)


とかふざけた事を考えたのが
いけなかったのか、

大魔王、ことアスラン・ザラが
不穏な私の感情を察知したのか、


スパーーーンッッ!!

私とキラ君のつながれた手を
手刀で切り離した。


「はい。仲直りは終わったな。
じゃあ、キラ・・・」

アスランはキラ君と私の間を離し、
私を抱き寄せて・・・


「今後一切、俺のにくっつくの禁止。
いいな。」

「「!?」」

不敵に微笑んだアスランに対し、
私はアスランの放った言葉が理解できず、
ぽかん、と彼の腕の中、大人しく納まっていた。



このお陰で、『妻(私)と不倫相手(キラ)、無事和解!!』
のニュースが学校中に駆け巡る事はなく、(私の努力返しなさいよ!)

『アスラン・ザラに、ついに恋人が!!!』
のニュースが広まってしまった。




その様を満足そうにご覧になる魔王、・・・
いえ、アスランを見て、


(私、絶対に選択しくじった・・・・!!!)


これからのことを思うと、
そう感じずにはいられなかった。



そして、


「あ、。今日の昼休みに生徒会会議が
あるから、一緒に行こうな。」

「は?なんで私が・・・」

トンチンカンなことを言い出す
アスランに、私は首を捻る。

まさか、恋人になったら四六時中
一緒にいる・・とかいう考えじゃないでしょうね・・!?


それは、確かに女の子のロマンではあるけれど、
本当にやられたら、うざい以外の何物でもないわよ!!!
(所詮、夢は夢よ。)

しかし、この大魔王は上手も上手であり・・・


「『なんで』って・・・そんなの
生徒会役員だからに決まってるだろ?」

「!?」

はいっ!?

おかしいなっv
私、そんな事実、今の今まで知らなかったぞ☆

何時の間に、立候補して当選したのかしらー(遠い目)


解ってる!

理由なんて、ちょーっと考えれば
解るわよ!だけど、

だけど、

認めたくないっ!!


もちろん、私のそんな思考、彼には
解りに解っているのだろう。

彼はふっと眼を細めて魔王の如く、笑うと・・・

「・・・解ってるだろ?
俺(生徒会長+ザラ家御曹子)の権力は絶対だ。」

「ちょ・・・そんなの認められるわけ・・・!!」

私は(誰が入るもんか!んな雑用係!+アスランと一緒。)
と断固拒否!の姿勢を作るが・・・

何故か、しれっとした余裕のアスラン。

こういうアスランは・・あれだ。

絶対的自信を持っているときだ。
それも超理論的な。


「言っておくが、困るのはだぞ?」

「え?」

「お前、”無断外泊”の件・・・
忘れてるな?」

「!!」


アスランは、私の両親への言い訳に、
『生徒会』を使いました。

     ↓

私の両親は、舞い上がってます。

     ↓

入らないと、嘘がばれてしまいます。

     ↓↓↓



「・・・図りやがったな・・・・・!?」


丁度いい言い訳なんて、こいつの事だから
星の数ほどあったはずなのに・・・!


「愛が故、って言ってほしいな。」



皆様、再度報告致します。

私、『恋人にしたらメンドクサイ人No.1』を
恋人に迎え入れてしまいました。

そう、完璧に・・・完璧に
選択ミスりました・・・!!



・・・・権力って持ってる分には
いいけど、使われる分には嫌よねー・・・。


とか、色々『人権的にどうよ?』っていうことを
無意識に思っていたわけで。

これ以上の波乱など、ないかのように
考えていたわけですが。






同時刻、



「ねぇ、聞いた?聞いた?」

「うん!マジ、驚いたよね〜!」


廊下ではしゃぐテンションの高い女子達に
イザークは眉を顰め、その場をさっさと過ぎ去ろうとする。


しかし・・・・


「ついに生徒会長に恋人ができるなんてね〜!!」

「しかも、相手はでしょ?
噂になってはいたけど・・・まさか本当に
付き合いだすなんてね〜」



「!?」


その話題に、イザークは早めるはずの足を止め、
目を見開く・・・


「・・・っおい!!それは本当か!!」


がしっ!!

一人の女子の肩を掴み、
イザークは叫ぶように確認する。

その女子達は一瞬ぽかーんとするが、
すぐに頬を染め、こくこくと頷いた。


「は・・・はいっ・・・。私達もデマか・・と
思ってたんですけどもっ・・ね!」

「う、うん!仲良く登校してたし、
いつもなら否定する彼女のほうも、今日は
否定しなかったッて・・・・・」



「・・・・・っ」

彼女達から与えられた情報に、
イザークの視界はぐらり、と揺れた。


そして、酷く低迷する、嵐のような、心情。


(こんなの・・・知らない・・・ッ)

イザークは、胸に手をあて、
ぐしゃり・・・と自らのブレザーを掴む。


解らない。

解らない。


解るのは、胸に渦巻く高ぶる感情が
ある、というだけ。





とにかく、


(そんなもの・・・・・絶対に認めん!!)
















     ねくすとすとぉりぃっ→


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花の嵐・・・やっと本章に入ります。

長かった・・・・っ。

かなり前な気がします。

『花の嵐』が巻き起こるよーみたいな
予告をしたのは。


・・・何話だったっけな・・・(おい)





           2008/01/31
 更新日     2008/03/31   惶月 奏(おうづきかなで)