『アスラン・ザラ』についての見解?
優秀で、頭が良く、美形で、
ザラ家の一人息子。
おまけにクルーゼ隊所属の
エリート。
え?表面的なことはいいって?
そんな事言われましても。
彼とは他人ですし。
そんな深く知るわけ
ないじゃないですか。
それじゃ困るって?
・・・・・うーん。
・・・そうですね。
私に言わせると
彼は詰めが甘いですね。
イレギュラーなことが起こると、
感情がそのまま出てしまうところとか。
それから・・・
それから、
この前の甘ったるい顔とか。
色々な意味で彼は”甘い”
と思います。
スイートボーイ
*前半*
桜がひらひら舞っている。
人工的に作り出された季節
だけれど、
そんなこと私には関係なく、
この季節は終りと始まりの季節だ。
私はこの春、アカデミーを卒業し、
軍人の予備軍から本物の軍人となる。
アカデミーの成績で
所属できる隊が決まる。
私は5位。
10位以内は赤服だから
一応はその中に入れた。
今日は卒業セレモニーと同時に
所属の隊が発表される。
やはり、ざわざわと沸き立っており、
皆、友達と色々な話をしている。
一番人気なのは
やはり・・・・・・・・
「私、絶対クルーゼ隊がいいっvv」
「だよね〜!イザーク様とお近づきに
なりたぁいっvvv」
「・・・イザーク様は無理じゃない?
絶対にあしらわれるよぉ〜。やっぱりニコル様よっvv」
「えぇ!?セオリーにいこうよ!
絶対にアスラン様だって!!クールな王子様っv素敵ッッ!!」
「もう!皆全く解ってないわ!
一番大人な魅力のディアッカ様に決まってるじゃない!」
きゃきゃっとはしゃいでいる
女の子を横目に、私は張り出されるのを待つ。
やはり、一番人気はクルーゼ隊。
あそこの隊は実力・名実共にナンバーワンだ。
死亡率だって、一番低い。
それだけ優秀揃いの新鋭隊だ。
だが、それだけでなく、
何故か図ったように御曹子の・・・
しかも飛びぬけた美形揃いなのだ。
しかもエリート中のエリート。
クルーゼ隊に配属=出世街道まっしぐら。である。
女子にはもちろん、
男子にも人気の高い隊だ。
ちなみに私は・・・
(・・・どこでもいいな。)
とかぼんやり考えていた。
とりあえず、最前線がいいことはいいが、
なんならオペレート中心のザフト軍の中心基地でもいい。
場所は重要じゃない。
そこで自分がどれだけ
貢献できるか、だ。
そう、問題はどこになったって
自分次第なのだ。
「諸君!アカデミー卒業おめでとう!
――では、今からそれぞれの隊を発表する!!」
ピッ
電子音と共に、大型電子掲示板にそれぞれの名前と
隊が表示される。
どうやら、順位順のようだ。
1位 カヲル・トーイ ゼリウス隊
・
・
・
あらま。
1位からゼリウス隊って
ことは、今回はクルーゼ隊はないわね。
ゼリウス隊は、確かにレベルの高い
隊だけれど、クルーゼ隊よりは格下だ。
今期は優秀なのがいなかったって
わけか。
まぁ、前期のザラ先輩たちが黄金世代
って言われるときだったからなぁ。
あの時は、確か5人もクルーゼ隊配属に
なったはずだ。
まぁ、求人するほど困っていない
ということもあるのだろうけど。
ととっ。
とりあえず、自分のを
確かめよう。
えー・・・と。
5位・・5位・・・
あ・あった。
”5位 ・ クルーゼ隊”
「・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?」
思わず、一度視線を逸らして
もう一度見直す。
・・・何度見ても変わらない。
クルーゼ隊だ。
・・・確かに、優秀じゃない者が
配属されないわけじゃない。
どんな隊だって、雑用はいる。
いくら優秀な隊だからって
雑用に優秀な人材は割り振れない。
そういうときには、
そうでない者が配属される場合も
あるだろうが・・・・。
それは、冷静に考えれば
私は当てはまらないだろう。
過大評価でもなく、過小評価でもなく、
私だって多少は実力がある。
曲がりなくとも赤だ。
何故か、ソレを見て
無性に重く重く溜息が吐きたくなった。
確かに、所属する隊は
どこでもいいと思った。
・・・・だが。
「・・・・・・・・それってどうよ。」
ガラガラガラガラ・・・・・・・・・
キャリーバックを引きずりながら
私はヴィサリウスの搭乗ゲートを探した。
クルーゼ隊配属が結局、
私一人だったらしく、
わざわざ先輩クルーが
案内してくれるらしい。
(なんだか・・・悪い。)
きっとパシられる感じで
来るのだろう。
きっと、クルーゼ隊所属くらいだから
もし、緑服の先輩でも忙しいに決まっているのに・・。
「・・・・さん?」
後ろから名前を呼ばれる。
「あ・・・は、はいっ!」
わざわざ来てくれたのだから
不快な思いはさせないでおこうと、
私は勢いよく振り返り、敬礼をするが・・・
「・・・・・・・・・・え。」
そこに居た人物に
私は思わず、目を見張った。
そこに立っていた人は、
予想外に緑でなく、赤の制服を
身に纏っており、
どう考えても、
新人の案内をする人じゃない。
「・・・・アスラン・ザラ・・・・・・・さん・・。」
思わず、呼び捨てで名前が口に出る。
慌てて”さん”取り付けたが。
気を悪くさせたか・・・
と思ったが、
彼は予想外に、
「・・・名前、覚えててくれたんだ。」
嬉しそうに・・・
また、あの日のような
甘ったるい顔でそう呟いた。
(いや、貴方の名前は覚える以前の
問題ですけどね。)
「あ・・ごめん、行こうか。」
私の視線に気づいたのか、
彼は、私の手からキャリーバックの取っ手をとる。
それに、私は慌てて
彼から取り返す。
「だ・・駄目ですっ!先輩に(しかもあのアスラン・ザラに)
そんなことさせられませんよ!」
・・・・・そう言うのは当然だと思う。
てか当然だよね!?
なのに、その人は
不服そうな顔をして、私の手から
またもやキャリーバックを取った。
「・・・・どうして、今更、俺に向かって
猫を被るんだ。」
「!」
「・・・・やめてくれ。頼むから。」
(・・・・・・甘い。)
やっぱり、この人が私に向ける表情は、
怒っていても、笑っていても、驚いていても・・・
とりあえず、どんな表情でも、”甘い”
確かに初対面の時、私は相当失礼な事を
言った。
しかし、あれは彼を見ていて言わずには
いられなかったと言うか。
とりあえず、二度と関わることの
ない人だろう。
と、かなり完璧に近い確信を
持っていたからだ。
だが、現状は180度変わってしまった。
「・・・・・同じ職場の先輩・・・それどころか
エースパイロットにそんなことできませんよ。」
無表情で紡いだ私に
彼はなんだか衝撃を受けたような・・・
少し悲しみが入り混じった表情をした。
やっぱり、それすらも・・・
「じゃあ、”職場の先輩”じゃなければ
いいんだな?」
「は?」
この人は、いつも変な・・・
突拍子もない事を言う。
今は何かを考え込んでいる風だ。
そして、何故か頬を染めて、
目が泳ぎだした。
「・・・・(何なんだ。この人。)」
思わず訝しげな表情で
彼を見詰めてしまう。
いや、彼が美形だという事は
私だって認めている。
今、一人でひたすら
照れたり、混乱している姿だって、
普通の男の子であったなら
私は引きに引きまくる。
だが彼ならば、それすらも目の保養になる。
「あの・・・ザラ先輩・・・・?」
ぎらっ
「!?」
私がザラ先輩と言った瞬間、
彼の瞳が決意に染まった。
「じゃあ、”俺の恋人”だったら、
猫被らないし、アスランって呼ぶんだなっ!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・・・何なのだろう。この人。
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2007/08/21
更新日 2008/04/01 惶月 奏(おうづきかなで)