スイートボーイ
*後半*
『じゃあ、”俺の恋人”だったら、
猫被らないし、アスランって呼ぶんだなっ!?』
このセリフをどう取れば
いいのか、私はひたすら悩んだ。
頬を赤く染めて・・・・
だけど、至極真面目な顔で見てくる彼。
これは、何か言わないと
いけないのか?
とりあえず、問いに答えようか。
「・・・・・・そうですね。もし恋人だったら
猫は被りません。恋人相手に自分を作るなんて
恋人の意味がありませんから。」
その返答に彼は、とても面食らったような
顔をした。
どうやら望んでいた回答では
なかったようだ。
「・・・・・・・じゃあ・・・
・・・”俺の恋人”になってくれ。」
「・・・・・」
ぱちぱちぱちぱち。
それには流石の私も
目を瞬いた。
目の前の告白(だよな?)をしてきた
彼には悪いが、
好かれるようなことは
何もしていない。
むしろ、嫌なヤツだと思われるほうが
自然だ。
なのにこの状況。
これは、どう考えたって・・・・
自分の中で答えを出すと、真顔に表情を戻し、
彼を見上げる。
「お断りします。」
「!?」
私のすぽっとした返答に
彼は相当ショックを受けたように
緑の綺麗な瞳を見開いた。
・・・・そりゃあ、天下のアスラン・ザラ。
告白して断られる事はなかっただろう。
「・・・・・っ・・・やっぱり・・・
俺の事嫌いなのか。」
苦しそうに呟かれたセリフに
私は首を傾ける。
嫌い?
・・・あぁ。
そういえば初対面の時に
そんな事言った気がする。
でも、それは別に・・・
彼自身がどうのこうの
という問題ではないのだけど。
というか、そこまでショックを受けられ、
まるでこの世の終りみたいな顔を
されると、私が悪者みたいで本当・・・・
不本意すぎる。
「・・・・・一ついいですか。」
「っ!」
私の言葉に何か希望を見出したのか、
彼はどこか煌めいた表情で顔をあげる。
いや、そうされると、
尚更言いにくいんですけどね・・・?
「それって、この前の私への仕返しで
からかってるだけですよね?」
「!?」
「いや、何かの謀?告白して、
上げるだけ上げて、落とす・・・みたいな。」
「ちっ!違うっっ!!」
「!」
私のセリフに、彼は本気で驚いているようだった。
あれ?
検討が違った?
「あはははははっ」
「!?」
急に大声で笑い出した
彼に私はびくっと思わず後ずさった。
そんな彼に周りの視線が集まる。
当たり前だ。
彼は居るだけで目立つのに。
こんなクールな彼から逸脱することをされれば、
目立つに決まっている。
しかし、そんなものどうでもいいと
ばかりに、彼は私しか見ていない。
「さ・・・さすがだなっ・・・!・!
本当”らしい”よ。君の考えはよく解った。
それから・・・・簡単にはいかないってことも。」
ヤバイ。
この人どこか切れちゃっている。
「いいさ。長期戦覚悟で行ってやる・・・・っ」
「!?」
「言っておくが、俺は君を諦める気は毛頭ないんだ。
今、気づいた。」
「あの・・・ちょっと?」
なんか、キャラ壊れてきてますよ?
「・・・・・・・・・はい。」
「?」
閉じた拳を差し出されて、
私は思わずその下へ手を出す。
すると、
ぽつん。
と一粒、深紅色の包装紙に包まれた
チョコレート?・・・を私の手を上にのせた。
「・・・・何ですか。これ。」
「前払金。」
「はぃ?」
「の。
・・・いつか手に入れて見せるから。」
そう言うと、彼は私に
顔を近づけてきて・・・・
わずか5センチのところで
止まり、
「・・・・・・・・・覚悟しておけよ。」
それだけ、妖艶に瞳を
細めて微笑むと、
私のキャリーバックを
手に取り、すたすたと歩き出した。
・・・・なんなんだ、このギャップ。
ありえないだろ。
いや、皆が思っているほど彼は
クールな王子様じゃないってことくらいは
見抜けてはいたが・・・・
やばい・・・。
混乱してきた。
・・・・頭が回らない。
呆然と立ち止まっていると、
ふと、先程彼から貰ったチョコレートが
目に入った。
(・・・・・・・・カロリーとるか。)
頭を動かすべく、深紅色の包装紙を剥ぎ、
楕円のチョコレートを口に入れる。
「・・・・あま・・・・」
ミルクチョコレートだ。
この頃、ビターばかり食べていたから
尚更甘く感じた。
(何だかなぁ・・・。)
茶色って、雰囲気的になら苦い色。
茶色一色で、硬い固形は、
見かけもとてもクールだと思う。
だけど、本当は
見かけを裏切り、とても甘い。
まるで彼みたいだな、と
なんとなく、そう思った。
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ヒロインの深層心理を謎のままに、
展開すらも謎のままに、
そういう終わり方も、いいと思います。
人生なんて、まさにそのお手本みたいなものだし。
ですが、本当は続きを描くつもりだったりも
した私(どっちなんだ)
ただ、連載並みに長くなりそうだったので
きりました。
折角なので、
お気に入りの設定を一つ披露。
実は
ヒロインはアスランに貰ったチョコレートを
即効で食べましたが(笑)
アスランは大事に大事に箱の中に
入れてとってます(笑)
ヒロインに上げたチョコレートも、
偶然持っていたわけでなく
あげようと思って購入した
高級ブランドチョコだったりします(笑)
とにかく、管理人はアスランが
大好きです!!(もういい)
2007/08/21
更新日 2008/04/01 惶月 奏(おうづきかなで)