はたして・・・・・

            これほどの危機的な状況があっただろうか・・・。





           





                   ビター・オア・スイート?#25





            「「・・・・・・・・・・・・・・・」」

            
            どのくらい時間が経ったんだろう。

            完璧に固まっている二人は 
            それすらも解らない。



            「・・・アスラン・・・・・・・。」

            そして、やはり先に我にかえったのは
            の方だった。





            「・・・・・・・・・・・・話をしない?」

            「・・・・・・・・・・え?」

            唐突にいわれた言葉にアスランは
            その言葉をすぐに理解する事が出来なかった。


            (はなし・・・?あぁ・・話だよな・・!・・・だが・・・・)


            言いたいことは解るが、このタイミングで言うのは・・・

            いや、らしいんだけどさ。


            (もしかして・・・いや、しなくとも、話をしたかったから
            はやく食事をしろと・・・・・・)

            アスランは反面ほっとするが、
            反面がっかりする。


            

            「・・・・・嫌?」

            いつまでも黙っているアスランに
            はやや困ったように顔を傾ける。 


            「え?いや!嫌じゃない!!・・・悪い・・少し・・・ぼーっとしてた・・」


            「・・・・ふふっ・・・」

            そんな少し抜けたアスランの回答に
            は不意に笑い出す。


            「アスラン・・・って・・しっかりしてるようで・・・
            抜けてるよね・・・・天然?隠れ天然?

            と笑いながらそう言って来る
            アスランは眉を潜めた。

            ・・・・馬鹿にされてるのか?

            と。


            
「馬鹿になんてしてないわよ?」

            「!?」

            見事に言い当てられた心の声に
            アスランはぎょっと目を見開く。


            「・・・そして、アスランは
顔に出る・・と。」

            「・・・・・・・・・・・・」

            馬鹿にされてる。


            あきらかに。


            の事は好きだけど、

            は、きっと恋人・・・ってだけじゃなくて
            ライバルなんだ。

            最大最強の。

            イザークなんて足元にも及ばないくらい。




            「はいはい。拗ねない拗ねない。」

            とアスランの頭を撫でるに、
            アスランは眼を細める。


            「・・・・・、俺を馬鹿にするのもいいけどな・・・・
            この状況をよく考えろよ・・・っ」


            そのアスランの
苦し紛れな(談)言葉に
            は一瞬、きょとんとして、状況を確かめる。


            ・・・・そういえば、押し倒された(?)ままだった。

            しかし、は余裕に笑って、


            「アスランは、そんな事同意なしに出来ないよ。
            アスランは私の事大切に思ってくれてるからね。」


            「・・・・・・・・・・・・」

           
            そう言われちゃあ・・・・さすがのアスランも
            完敗である。


            「・・・ねぇ・・アスラン・・・?」

            「・・・・何・・・?」

            「・・・・このままで話しするつもり?
            私は構わないけど・・・・アスランはつらくない?」

            「・・・・・・・・・・」


            それは、どういう意味の『つらい』なのだろうか・・・?

            ただ単に腕が・・と言う意味か?
            それとも、男の性・・・というものを解っていて・・・?

            
いや、それはないな。(きっぱり)
            明らかに前者だろう。

           

            「あぁ・・・そうだな。」

            と言って、アスランは体を起こす。

            それから、が起き上がるのも手伝う。


            「ありがと。・・・さて、何を話しましょうかね♪♪
ダリーン?

            「・・・・・何が話したいんだい?
はにー。

            「アスラン!
棒読み!!

            キラキラなのセリフに引き攣りながら
            返答したアスランはに厳しい指摘を受ける。


            
        
            
            「はぁ・・・・っ・・・・で?」

            「ん?ぅ〜んとね、ほら、私達、小母様の手紙で、
            テンぱってたじゃない?」

            は隣に無造作に置いてあったクッションを
            膝に置く。


            「だからね、ほら・・・あったかぁくて、ラブラブな
            雰囲気を作りたかったの!・・・ほら・・その・・・・・」

            「・・・その?」

            何故か頬を染めて口ごもる
            アスランは首をひねる。

            「・・・・その・・・・結婚前に・・・さ・・・・・・・」

            「!」

            そのの言葉にアスランは
            目を見開く。

            それは、もちろんの様子が
            あまりにも可愛らしかっただからなのだが・・・



            「・・・・・・あぁ!!もうっっ!!そんなに
            固まる事ないじゃないっっ!!〜〜〜っっっ
腹立つッッ!!

            とはそんな事を叫びながら
            ソファーから立ち上がる。


            しかし、『腹立つ』とか言いながらも
            それはどう見ても『照れ隠し』だった。


            「もういいっっ!もういいもんっ!!
            いつもの様に普通ーーーに眠って起きるから!!」

            「ぷっ・・・・はは・・・っ・・待ってよ、。」

            アスランは笑いながら、部屋に帰ろうとする
            を引き止める。




            「もういいもん・・・・・っ!!あす・・アスランは・・・っ
            本当は結婚とかどうでもいいんだ・・・っ」

            「へ!?」

            は拳を握り締め、そんな事を少々涙目に
            なりながら搾り出す。

            それには、予想外なアスランはギョッとする。

            しかし、はそんなアスランなど見ないで
            下を見詰めたまま、そんな事を口走りだした。


            「そうよ・・・!アスランは本当は私と結婚なんか
            したくないのよ・・・!」

            「いや!そんな事・・・」

            「だから・・・だからっ、最初戸惑ってたんだよ!
            私なんて・・・・たかが一ヶ月前に会った・・・だけだもんね・・っ」

            「・・・俺は・・」

            「・・・・・・ならそう言ってくれればいいじゃない・・・!
            〜〜〜〜もういいっっ!!アスランとなんか・・アスランとなんか・・・
            婚約破棄してやるんだから・・・・っっ!!」


            もう自分の世界に入り込んでいる
            そう堰を切ったように叫び、部屋を飛び出そうとするが・・・・

          
  ちょっと待て!!!

            と、ちーとも人の話を聞かない
            腕を捕まえる。


            いつものアスランなら・・・いや、と出会う前の
            アスランならば、ここは呆れて冷静に対処するだろう。

            というか、『馬鹿馬鹿しい・・・』と言う感じだろう。

            ・・・・・・が、彼はと出会ってしまった。


            
            「婚約破棄・・・って・・・!!ちょっと落ち着け!!」


            先程の俺をからかうほどの彼女は何処にいったのだろう・・
            とか、頭の片隅で考えながらも、

            かなり、アスランもテンパっていた。


            婚約破棄だなんて・・・
冗談じゃない!!


            誰が、と結婚したくないって言うんだろう?
            
            こんなにも・・一緒にいたいと思ったのは・・・・
            欲しいと思ったのは君だけなのに。



            「いいよ・・っもう・・・っ無理しないでよ・・・!
            いいもんっ・・・・もうっ・・・・」

            アスランに腕を掴まれていても、視線は
            相変わらず、アスランを見ない。


            「・・・、いいから俺を見てくれ・・・・」


            しかし、は顔を下げるばかりだ。
            それに、アスランは苛立ちと焦りを感じる。


            「!いいから俺を見ろ!」

            「・・・・・・・・・・」

            はアスランを見ようとはしない。

            「〜〜〜っ!」




            ぐいっ

            「え?」

            
            はあまりの急な事に、
            目を見開く。

            顔を引き寄せられたか・・・と思えば
            前面にアスランが広がっている。

            
            「・・・・・・ん・・・っ」

            は少なかれ、驚いていた。


            確かに・・・キスした事がなかった訳じゃない。
            だけども・・・・、片手に数えられるほどしかなく、

            こんなに急に・・・は今までなかった。




            ・・・・・・・・・・・・・・・・・

            ・・・・・・・・・・・・

            ・・・・・・・・・


            「ん・・・っんん〜〜〜〜〜っっっ!!!」               

            は、あまりの苦しさに
            アスランの胸をバンバン叩く。

            アスランは、の息が持つギリギリまで
            口を離さなかったのだ。


            「落ち着いたか?」

            ぜーはー言っている
            アスランは覗き込むようにそう問いかける。


            「はぁ・・はぁはぁ・・・・っ・・・お陰様で・・・・・っ」

            その言葉にはアスランを少々睨みつける
            ようにして見あげるが・・・・        


            「・・・・!?」

            はアスランの顔を見るなり、
            拍子抜けた顔をした。

            
            どうせ、いつもの黒バージョンで、
            ふふん♪・・と言う感じで微笑んでいると思っていたのに。



            「・・・・なんで、泣きそうな顔してるのよ・・・・」

            
「〜〜〜〜っ!!バカッ!!!」


            アスランはに至近距離で
            叫ぶ。


            「・・・・っ・・うるさいなぁ・・・・・え!?」

               
            の文句は、残念ながら最後まで
            紡がれる事はなかった。

            何故って・・・・


            (こんな至近距離で、
            泣き笑いのような表情されちゃあなぁ・・・・)


            
ノックアウトよ、お姉さん。(どうして、こういう思考回路なんだろう・・)

             

            
            「・・・・・・の顔久しぶりに見た・・・・・」

            「・・・何言ってるのよ・・?今さっき見たばっか
            じゃない。」

            「にはそうかもしれないけどなぁっ!
            俺には・・本当に長かったんだ!!」

            「・・・・・はぁ。」

            アスランの力説に、は相槌を打つしか出来ない。
          
               
            「いいか、よく聞け。」

            「・・・・・・はい、何でしょうか先生。」

            「真面目に!!」

            「・・・・・・・・・・(へーへー)」

            
            そんなの反応に、アスランは
            思わず半眼になる。

            今さっきまでの、悲劇のヒロインみたいな
            彼女は何処言った・・・?と。

           
            アスランは、はぁー・・・と一息つき、
            こほんっと一つ咳払いをする。


            「・・・・・俺は、と結婚したいよ。」

            その言葉にの目は
            まんまるに開かれる。


            「家とか、体面とか・・・そんなものどうでもいい。 
            俺は、が好きだから結婚したい。」

            「・・・・・・・・・」

            「なのに・・・急にはあんな事
            言い出すし・・・・・」

            「・・・・・・・・・・」

            「婚約破棄・・・本当にされたらどうしようかと
            本当に焦ったんだからな!」

            「・・ごめん・・・・・」

            
            そんなの様子に
            アスランはふっと表情を和らげた。


            「・・・・いいよ、。謝らなくて。
            俺も悪かったんだ・・・・ちゃんと伝えてなかったから。」

            はそのアスランの言葉に
            ふるふるっと首を振る。

            「そんなことないっ!アスランはちゃんと
            言ってくれてたもの・・っ私・・ちゃんと解ってるんだよ・・?」

            「・・・・・・・・・・じゃあ、今さっき
            なんでああなったんだ?」   

            「・・・・・・・」

            その問いかけに、は少しの間
            考え・・・・

                                        
            「世に聞く、まりっじぶるーってヤツじゃないかしら?」

            「・・・・・・・・・」

            そんな発作的なマリッジブルーが
            この世のどこにあるんだ・・・・・・とつっこみたかったが
 
            とりあえず、押さえ込んだ。

            だって、
だし。(どんな理屈だ)




            「・・・じゃあ、何だ?本当に相手が俺でいいのか
            不安になったって事か?」

            アスランはちょっとした意地悪な
            気分で言ってみる。

            いつものなら、あっさり交わすだろうが、
            今はそんな余裕あるはずがない。

         
            「ちが・・違うよ!!それはないっっ!!
            ・・・・・どっちかって言うと・・・逆よ。」


            「逆?」


            「そ・・・。本当に・・・・・・・
            ・・・私なんかでいいのかな・・・・って。」


            切なそうな顔でそんな事を言う
            をアスランは眉を潜めた後、そっと抱き寄せた。   


            「・・・・馬鹿な事を言うな。が駄目だったら
            誰がいいって言うんだ?」

            「だけど・・・私・・ガサツだし・・・・令嬢っぽくないし・・・っ」

            「、そんなヤツだったら、好きになってない。   
            俺は、君だから好きになったんだ。」

            「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いつからそんなキザなセリフ
            言えるようになったのよ・・・・っ」

            とかぼそぼそっと呟く
            アスランは脱力する。


            「・・・・・・・だから、お前は何で要点要点で 
            茶化すような事を言うんだ!」

            「だって!仕方ないじゃない!!
            アスランが変な事言うんだもの!!」

       
            そんな言い合いになっては、
            ムードも色気も無い。




            「・・・・・とりあえずっっ!!!!」

            「何よ!?」

            「俺とお前は結婚する!」

            「!?」

            そんな喧嘩口調で言われた
            セリフにさすがのも口をあんぐりあける。

            
            なんですか・・・

            
拒否権なしですか・・・。


            「あたりまえだろう?拒否権なんて
            あってたまるか・・・っ」



            心読んだっ!?

            エスパー!?!?



            確かに、このカップル・・・
            恋人であると同時にライバルかもしれない。

            かなり、
高度な心理戦だ。



            はアスランから退こうとするが、残念な事に、
            アスランの腕ががっちりの体を固定している。 

           

            そして、見事に黒バージョンになった彼は
            翡翠色の艶やかな瞳を細めて言うのだ。


            「もし、嫌がったとしても・・・・さらってでも、
            俺のものにするから。・・・・覚悟して。」


            とか言われちゃいかがですか!?
            奥さんっっ!!(え!?)


            しかもこの
至近距離!!


            やばい・・・・この人と結婚したら、
            死んでしまうかもしれない・・・・・

            心臓が持たなくて。    


                                         

                    
             
            

      ビター・オア・スイート?#25



                                          ←アス夢トップ      next



#############################################






                         長かった・・・・。
                         切ろう切ろう・・・と思っていても
                         キリがよくないし・・・・・で、
                         なかなか終われず・・・

                         ずるずるずる・・・・。

                         すみません、本当に。

                         ここまで読んでくださった方々
                         ありがとうございました!!


                  


                              2006.1.17 惶月 奏(おうづきかなで)