雨に打たれて
体は凍えそうなのに。
どうしてかな。
アスランの気持ちから
逃げて回っていた頃よりも、
心はずっと生き生きしている。
ブロッサム。
―第11話
寒い・・・っ
私はそろそろ感覚がなくなりそうな
手を摩る。
雨はやもうとすらしていない。
勢いは増すばかりだ。
呆然と上を見上げる。
その瞬間、相当な量の水が
私の顔に攻撃するかのように振り落ちてきた。
(はーはーはー!もう痛みすら
感じないもんねーーー!!)
私は、雨に向かって
鼻で笑う。
・・・・なんだか悲しくなってきた。
ここに居座ってから、
まだたったの3分。
これからが勝負だ。
言っておくが、一時間でも十時間でも、
あいつがでてくるまで待つ気だ。
もし、このまま出てこなくても、
月曜日の朝には学校に行く為に
出てこざる負えないだろう。
その時に、私を一瞥して、
『・・・まだいたのかよ。ストーカーだな。』
とか言いやがった暁には、
一発殴ってやろう。うん。
その場合には、
私は一日半もここにいるのか?
・・・うわ・・キツ・・・!
いや、しかし、いいかもしれない。
そうすれば後悔の念なんて
全く全然起きないだろうから。
私は当初の目的を忘れ、
そんな計画を立てていると・・・・
『・・・・・、入れ。』
スピーカーからアスランの声がする。
昨日会ったばかりなのに、
泣きたい位懐かしく感じた。
しかし、変な計画を黙々と立てていた私は・・・
「はやっ!!まだ3分しか経ってないよ!?」
そんな事を口に出していた。
『・・・・・・・・・お前は何をしにきたんだ・・・・。』
アスランの呆れた声がスピーカーから
聴こえる。
多分、最初に間があったってことは、
私のセリフにこけたな。
「いやー・・・アスランが『会いたくない』とか
言うからにはさ?・・一時間は覚悟してたわけよ。」
まさか3分で入れてもらえるとは思わなかったさ。
とかシミジミ呟く私に、アスランは溜息を吐いた。
『・・・人の気もしらないで・・・・。
とにかく入れ。』
その言葉の次の瞬間、
大きな柵は自動で動き、門は開かれる。
「・・・・・・・」
『?・・・どうした?』
いつまでもぼけっと突っ立っている
私に痺れを切らしたのか、
アスランはスピーカーを
介して問いかけてくる。
それに、私はばつの悪そうな笑顔を
カメラに向けた。
「・・・あのさー・・アスラン?
・・・こう言っちゃ・・なんだけどもさ・・」
『?・・なんだ?』
「ここでこのまま話しちゃ駄目?」
『!?』
アスランの顔は見えないけれども、
どんな表情でいるのかくらい
予想がつく。
きっと、目を丸くさせているだろう。
「なんか・・・アスランの顔が見えないほうが・・
素直に色々・・言えそうな気がするって言うか・・・
なんか気まずいじゃん?色々と・・ね?」
にっこり笑って、アスランに要求を
受け入れてもらおうとするが・・・
『・・・却下だ。』
返ってきたのは有無を言わせない
きっぱりとした返答だった。
「えぇ!?・・・何で!?いいじゃん!!」
『よくないっ!!そのままだと風邪をひくぞっ!!』
「え?」
アスランのセリフに
今度は私が目を見張る。
・・・・心配・・してくれるの?
あんなに酷い事したのに?
アスランの優しさに、私は涙が
出そうになるのを必死でこらえる。
だってカメラでアスランが見てる。
「・・・・3分で入って来い・・って言ったのは
私を心配してくれたからなのね。」
自分の意地よりも、
そちらを優先してくれたんだ。
『・・・・別に・・。とにかく入って来い。
入ってこないと話を聞かないぞ。』
「・・・・・うん・・・。ねぇ、アスラン?」
『おい、いい加減に入って・・・・』
「そういうアスランの解りにくい
優しさ、私好きだよ。」
『!?』
返答がなくなったスピーカーを見て、
私は意味もなく笑ってしまった。
だけど、そんな事を言った
自分もなんだか妙に照れくさくて
私は、自転車へと急いで乗り、
彼がいる豪邸へとペダルを踏みこんだ。
ねくすとすとぉりぃっ→
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いや、うん。
あ、うん。
・・・・という感じ。
2007/09/24
更新日 2008/01/09 惶月 奏(おうづきかなで)