自分の過ちを、

いくら悔いたって、

いくら許しを請うたって、

それをなくすことはできない。


・・・なら、私はその過ちの分の
痛手を「今」受けるよ。

過ちに気づいた、今、
その事実に立ち向かっていこうと思う。


過ち自体をなくすことはできないけれど、

それをも超えて、
前へと進めるから。














ム。
             ―第12話













場違い。


そんな言葉しか浮んでこない。

外観も凄かったが・・・
なんだこれ。


どでかい玄関の扉を開けたら
広い空間がありまして!

・・・目の前には大作りな螺旋階段。


・・・これ、テレビで見たことあるよ。

なんだっけ、ベルサイユ宮殿だっけな・・・っ


というかというか!

日本で靴を脱がない家があるなんて
夢にも思わなかった。



話を戻しましょう。

私が、玄関先までつくと、
超能力かカメラかは、知らないが、

メイドさんが二人がかりで
玄関を開けてくださった。
(自動でもあくっぽかったけども)


それに私は必要以上にへこへこしながら
入ると、

なんと、アスランが
そこにいて。


・・・・ラスボスは一番遠い部屋に
いるものでしょうが!

スタート時点に居て
どうするよ!?

とかとか思ったが
もちろん口には出さなかった。

まぁ、インターホンで喋っていたのだから
そこにいてもおかしくはないのだけれど。



アスランは壁にもたれかかり、
腕を組んでこちらを見ている。

私服は、ストレッチ素材の紺色七分に、
黒のスエット、というシンプルなものだったが、

この家に対して、全く浮いてない・・
というのはさすがだと思った。


・・・乗り込んだのはいいが、
いざ、アスランを目の前にすると
気まずかった。


「・・・・・こ・こんにちは・・・っ」


そんな事を口走る私に、
アスランは盛大に溜息を吐いた。

それに少し飲み込まれそうな
自分に、私はカツをいれる。

そうだ!
ここに遊びに来たわけじゃない。


「あ・あのですねっ!?
お話と言うのは・・・・」

「・・・。」

「は、はい?」

すぐにでも本題に入りだしそうな
をアスランは呆れたような表情で止める。


「・・・・まさか、ここで話すつもりなのか?」

「え?・・・そうだけど・・・?」


至極当然に答える
アスランは溜息を吐く。


「・・・・・彼女を風呂場に案内してやってくれ。」

アスランがメイドに向かって
命じた言葉に、は目を見開く。


「えっ!?・・・ちょっ!
そんな悪いよ!!このままで平気だから!!」

「・・・・強制連行で頼む。」

の主張など無視し、
アスランはメイドにそう追加命令する。

そしてさっさと螺旋階段を上り始めた。


「ちょっと!!アスラ・・・・ッ!」

慌ててアスランの腕を掴もうとする
を、メイドさんが二人がかりで捕まえる。


様、こちらでございます。」

にっこりと微笑んだメイドさん達に
が敵うわけもなく、

その名の通り
強制連行された。










トントン・・・


「アスラン様、様をお連れしました。」

メイドがそう告げると、部屋の中から
「通してくれ」と簡潔なアスランの返事が返ってきた。

いよいよが望んできたアスランとの
面談なわけだが・・・


(・・・入りたくない。)


一方のは、先程までの勢いはどこへやら。
扉の前で遠い目をしていた。


・・・・お風呂に入らせてくれたのは
本当にありがたい、と思っている。

万全のコンディションで、どかっと腰をおちつけ、
アスランが逃げられないシュチュエーションで
話すのは、とても素晴らしい。


・・・だが。


(これは恥ずかしすぎる・・!!)


は、きゅっとスカートの裾を
握った。


しかし、そんなの心境など
どこ吹く風。

メイドは、すんなりドアを開けて、
に入るように促した。


様、さぁ中へどうぞ。」

「・・・・っ」


ここまで来て逃げるわけには
当然いかない。

は意を決して部屋の中へと踏み込んだ。


部屋の中にやっと入ってきた
確認すると、アスランは読んでいた本を机に置いた。

そして、と目が合うと、
にっと笑い、

「中々似合ってるじゃないか。
・・・そのメイド服。」

「・・・・どうも。」

無表情で応答した
だったが、内心かなり恥ずかしかった。

(なんで私がコスプレちっくなことを・・・・ッッ!!)


しかし、の服はずぶぬれ状態で
着れる状況じゃなかった。

アスランは一人っ子らしく、
私のサイズの女物はメイド服くらいだったらしい。


お風呂どころか着替えまで
用意してくれたのだから、

文句は言えない。





「・・・どうぞ?」

いつまでも座らないに、
アスランは自分が座っているソファーの
正面のソファーに腰掛ける事を促す。

それには黙って頷き、
素直に従った。





「・・・まさかここまで来るとは
思わなかった。・・・さすがだな」

くすくすと笑いながら
そんなことを言うアスランに

は居心地が悪そうに
拳を握り締めた。

アスランの態度は、以前と同じような
普通に戻りかけている。


・・・・・飲まれてしまいそうだ。


このまま
『言わなくてもいいんじゃないか』
っていう、逃げの考えに。


だけど、私から行動しなければ
いけない。

それが、どんなに怖くても。




「・・・・話したい・・・ことがあって・・」

「・・・・・・」

「・・・・色々考えたの。あのあと・・・」

あのケーキショップでの一件は
にとって苦い出来事であるのと同じように、

アスランにとってもそうであるのか、
アスランは眉を顰めた。


「とりあえず・・・・ごめんなさい・・・
どうしてもアスランに謝りた・・・・」

「それで、ここまで来たって言うのか?」

の言葉を遮り、
アスランはやや強い口調で言葉を発す。

それには目線をさげたまま、頷いた。


「・・・・・・それだけで・・か。」

先程の強い口調とは相反して、
どこかショックを受けたようなセリフに
は慌てて顔をあげ、アスランを見る。

アスランは眉を顰めて、をじっと見ていた。


「・・・・・・のそういう悪いと思ったらすぐに
片をつける姿勢はいいと思う・・・。そういう所も好きだから。
・・・だけど、こういう時には残酷以外の何者でもない・・・っ」

声の音量は小さいままなのに、
押し込めるように荒げていう言葉に
は瞳を揺らす。

「・・・・・っ」

言い方が不味かったのか
またアスランを傷つけてしまった。

もしかしたら、こんな中途半端な状況で
アスランに会いに来るべきではなかったのかも。

期待をさせるような行動は
期待に応えられるときまで行うべきでは
なかったのかも。

今からでも混乱しているアスランの
前から私は消えた方がいいのかもしれない。



だけど


だけど・・・っ


は、逃げそうになる自分を
引き止めるかのように、拳に力を入れる。


「・・・ごめん、確かに私は来るべきでは
なかったのかもしれない・・・っ」

「・・・・・・・」

「あれだけ、アスランに言われておきながら
まだアスランの気持ちを・・私、どこかで
疑ってる・・・っ」

その言葉に、アスランは
先程とは比べ物にならないくらい、

傷ついた顔をした。



やばい。

喉が詰まってきた。

今にも泣きそう。


だけど、伝えなければ。


彼と話し合えるチャンスは
そうそうないのだから。

これを逃したら、
また私は後悔する事になる。


「だけど・・・っ私は・・・っ
自分勝手だけど・・・・・」


息が詰まる。

こんな言葉、彼に言っていいのかすら
まだ解らない。

私はアスランを見ていられなくなって
顔を俯かせ、顔を両手で覆う。


「・・・っ・・・会いたかった・・・・!」


「!」


「アス・・ランに・・・どうしても会いたくなって・・・っ
もうこのまま話せなくなる・・・って思ったら・・
苦しくて・・・・!」

溢れてくる涙を彼に
見せないように両手に力を入れる。


・・・この状況で泣くなんて卑怯すぎるから。

アスランの前では絶対になくもんか、って
思ってたのに、

昨日の夜からずっと泣き続けてた
せいかな?

涙腺がいう事を聞いてくれない。




ぐっ

上半身が強い力で
引っ張られる。


気が付けば、いつの間にか目の前に
いるアスランに抱き締められていた。

お風呂に入った後だったけれど、
やっぱり雨で体が冷えていたんだろう。

・・・・彼の体温は
とても暖かかった。


「・・・!?・・アス・・・・・」

「・・・もういい。」

「!?」

「ありがとう・・・それで・・・・十分だ。」


とても強く抱き締めている
腕とは相反して、

その声は、少し震えていた。




「会いに来てくれて・・・・・・・ありがとう。
俺も・・・・会いたかった。」



馬鹿アスラン。

そんなの卑怯じゃんか。



そんなだから、

どんなに抗っても、惹かれちゃうんだ。










     ねくすとすとぉりぃっ→


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      2007/09/24
更新日 2008/01/29  惶月 奏(おうづきかなで)