アスランとの初まりから、

今まで。


いくら思い返しても、
いい思い出がない。

そう、全くない。


彼に心惹かれるような
ロマンティックな出来事も


・・・・・なかった気がする。

いや!てか、ないよ!!


なのに、なんで、
今、私はこの人にこんな面を見せて。

こんな思いを抱いているんだろう。



人間って不思議だ。













ム。
             ―第13話












どれくらい彼は私を
抱き締めてくれていただろうか。


時間的な長さが解らない。


だけど、大分経った気がする。



「・・・・アスラン・・・もう・・いいよ。
ありがとう。」

私はやっと止まった涙を拭いながら、
アスランの胸を押し、起き上がろうとするが・・・


私の背に回された腕に
未だ力が入っていて、離れられない。


「・・・・もう少し・・・」

ぽつりとそう呟いた
アスランに、

いつもなら一発殴ってやる所だが、

今日は大人しく
それにしたがった。


「・・・・ねぇ、アスラン?」

「うん?」


「・・・私ね、アスランの気持ち・・
信じてみる。本当は・・なんで私なんかって・・
今でも疑問で・・・信じられないけど・・・」

「・・・・・・・・」


「一緒にいたいから・・・信じる。」


私はきっぱり、そう言い放つ。

だって、これが今の私の気持ち。

本当の本当。

正直な気持ちなんだ。



言葉にすることで自分自身の気持ちが
はっきりと解る。

どうなるかなんて、

本当の事なんて、

解らないよ。


だけど、それでも

傷つくとしても一緒にいたい。






がばっ

突然アスランが、私の体から自分の体を離し、
私の顔を驚いた表情で見詰める。

「?」

「それって・・・俺の事が好き・・・ってこと?」

「!?」


その言葉には、私が驚く番だった。


「え・・・いや・・・その・・・そこまでは
解ってない・・っていいますか・・・っ」


とんでもない方向へいっている
アスランの思考を私はやんわりと
修正するが・・・・

しかし、アスランは興奮した様子で
言い募る。

「いや!だって・・・一緒にいたいって・・
思ってくれてるんだろう?それって
俺の事好きってのと変わらないじゃないか!」


「え・・・いや・・・・、
・・そう・・・なの・・・かな?」

私はあまりのアスランの迫力に
流され気味になる。


「あぁ!・・・そっか・・・!
・・・やっと俺の恋人になってくれるんだ・・・!」

「え!?いや・・・ちょっと待って!!」

曖昧に受け答えしていたのが
悪かったのか、彼の思考はとどまる所を知らない。


確かにアスランのこと、好きかもしれない。


だけど、まだその事実を確定するには
早いような気も・・・っっ!!

当初の計画とかなりずれてきた
現実に、私はかなり慌てた。


そんな私に、アスランは
「冗談だよ」ってくすくす笑った。

しかしその直後、急に真面目な顔に変えた。


「アスラン?」

「・・・・・まだの気持ちが不安定なのは
わかる。」

「・・・・・・」

「だけど、俺と付き合ってほしい。」


その言葉に、は瞳を大きく見開いた。

そんなの様子に、アスランは
困ったような表情のまま微笑む。

「・・・いつまでも待つ気でいたんだ。だけど、
との距離が不本意だけど、急に縮まって・・・
なにか確証がないと不安なんだ。」

「・・・・・・・・っ」

「・・・駄目か?」


じっと、真剣に・・
そしてどこか不安そうに見詰めてくるアスラン。


(・・・・・・・・・・反則だよ。)


至近距離で、その顔の、そんな表情を
見せられたら、NOといえる女の子なんて
いないだろう。

しかし、こんな場面で
流されていいのか!?

まだ自分の気持ちがはっきりしない
今の時点で付き合っても

彼を傷つけるだけではないだろうか。


「・・・〜〜〜〜っ。私が・・・やっぱり無理だと
思ったとき傷つくのはアスランだよ・・・!?」

「解ってる。」

「〜〜〜〜っ!期待してた分、返ってくる傷は
大きいよ!?」

「解ってる。」


私がどんな不安要素を煽ろうが、
断固とした瞳で私を見据えるアスランに、

敵う訳がなかった。


「〜〜〜っ・・・・・浮気したら、
しばくからね・・・!」

「!」

苦し紛れに吐かれた私の言葉に
アスランは、目にも留まらぬ速さで私を
抱き締めた。


ぎゅぅぅうううっ

相当力を入れて抱き締められる。

それには『う・・っ』とうめき声を上げるほど苦しく、
やめさせようと口を開こうとしたが


「・・・・・よかった・・・・・っ」


小さく、まるで無意識中の言葉のように
呟かれた声に、私は口を閉じた。


(・・い、一応は・・恋人だものね・・・)


私は自分の中で、やや無理やりにそう納得させ、
アスランの背に手を回した。

その瞬間、アスランの体がびくっと
震えたが、

嬉しそうに私の頭に自分の頬を
擦り合わせてきたので、

とりあえずは、そのままでいてやることにした。


とか言いつつも、
はっきり言って色々ぎりぎりだった。


心臓がドキドキ言ってる。

顔も熱い。

な・・・なんていうの?


アスランって綺麗過ぎて
近づけないような雰囲気あって・・
(いつもアホだから忘れてたけど)

そんな人と抱き合ってる。

その事実に、
・・・・気絶するくらい、くらくらする。

死にそうだ。


・・・だけど、





(・・・満ち足りた気分・・・)


ふと、思い浮かんだフレーズに
私は眼を細めた。


そう、きっと、こんな感じ。

”満ち足りた気分”


どんなに楽しくても、笑っていても
心にどこか、いつも冷たい感じが残っていた。

生まれてから
その部分はいつもあったから、

それが当然だったけれど、


今は、それが溶けてなくなっている
感じがする。


冷たくない。

あったかい。

心の全てが。


不安感も、寂しさも、
なにひとつない。

・・・・不思議な感覚。


ドキドキして、熱くて、麻痺しているって
のもあるんだろうけど。

だけど、とても安心して・・
満ち足りてる。


(だから、皆、誰かと生きていくんだ・・・・)




「・・・ふふっ」


私は、思わず笑ってしまう。

自分が考えている事が
あまりにも壮大すぎて。


?」

アスランが訝しげに
私に問いかけてきたけれど、

私は、アスランから体を離さず、
「なんでもない」とくすくす笑った。


とりあえずは・・・


(このメイド服はやく着替えたい・・・っ)










     ねくすとすとぉりぃっ→


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両思い?両思い!

わぉ!やっとだね!

さぁ!ここからが戦いですっ!!






       2007/11/08
 更新日 2008/02/18   惶月 奏(おうづきかなで)