、多分青春真っ盛り。


私はこの受難の中で、
ある考えに行きつきました。


恋したければ、アスラン・ザラと
きっちりさせなければいけない。


という考えに。















ム。
             ―第8話













高級通り街にある豪華ケーキショップ。

その中のゲストルームの一室に
テーブルに座り、向き合っている二人の男女がいた。


そのテーブルの上には
大量のスイーツが置かれている。

だが、そんな甘いスイーツたちとは
間逆で二人の男女の表情は

決して甘くなかった。








「言いたいことはよく解ったわ。
つまり、キラとは何の関係もない・・・・と?」

「あぁ、そうだ。」


一通りアスランの弁解が終わったところで、
が確認の応答をする。


「じゃあ、その件に関しては信じる。
・・・・じゃあ、次は本題ね。」



のセリフに、アスランは少々安心するも、
すぐに顔を引き締めた。

勝負はこれからだ。



「・・・・もう私に関わらないで。」

「!?・・・だから・・・っ
キラのことは誤解だって・・・っ」

「それは解ってる。・・・だから
『今後一切話しかけるな』とまでは言わない。」


ミルクティーの入ったティーカップを
ゆらゆらと揺らしながら

は伏せ目がちに言った。

そんなにアスランは
小さく深呼吸のような溜息を吐いて、

目の前のを見据える。


「・・・・お前は大事な事を
忘れてる。」

「・・・何?」

「俺はが好きだと言った。
・・・・そこからじゃないのか?」

「・・・・・・・・・」

「いい加減・・・信じてくれ。
でないと、も・・・俺も動けない。」

切実に緑の瞳を向けて
請うようにを見詰める。


その視線に、は居たたまれず、
ぱっと俯いた。


解ってる。

アスランの気持ちに対して
私がどう思うかを彼に告げる。

・・・それが道理というものだ。


彼が、私を好きだという事。

ここから思考を展開しなければ
いけない。

だけど、そこから私はいきなり
躓いてしまう。

彼の言葉を信じる事が
できない。

・・・いや、信じないようにしてる。



認めたら終りなんだ。

そう認めたら
何もかもが終わってしまう。

”何が?”なんて
よく解らない。

だけど、認めちゃいけないって
最後のストッパーが言ってる。

だから・・・・・・・


アスランの気持ちが嘘だって
はぐらかしてきた。

今の今まで。


自分の気持ちなんて考えたくなった。

いつからか。


だけど、向き合わなければ
いけない。

いつまでも逃げても、
いつかは向き合わなきゃいけないから。


そんなの解ってるよ。



「・・・・怖いのかもしれない。」

ぽつりと漏らしたも言葉に
アスランは訝しげな顔をした。

少し考えるように目を細めてから、
のほうに視線をやった。


「・・・何が?」

それには諦めたような
表情で一つ息を大きく吐くと、

アスランをまっすぐに見詰め、
小さく微笑んだ。


「・・・もう意地張っても仕様がないから、正直に言うとね。
・・・アスランのこと信用したらすぐに好きになる気がするの」

「!?」


そのの今までとは違う姿勢と
カミングアウトにアスランは複雑な表情をした。

嬉しいけれど、まだ信用されてないわけで。

何かがの気持ちにストップを
かけているわけであり、

それが取れない限り、彼女のアスランを
受け入れない体制は崩れないのだ。



「・・・・だから怖い。私が好きになった時、
アスランの気持ちが嘘だって気が付いたら?
・・・・私立ち直れないわよ。」

は俯き、悲哀の帯びた表情で
小さく笑った。


そんなに、アスランは眉を
最大限に顰め、唇を噛み締める。

拳は太腿のところで硬く結ばれ、
力の入れすぎで、かすかに震えていた。




「・・・・・・・・・・はずるい。」

「!?」

喉の奥から搾り出されたような声に
は瞳を見開き、アスランの方を見上げる。

そこには、不快そうで、苛立ったような・・・
だけども悲しそうな表情の彼が居て。

今まで色々なアスランを見てきたが、
初めて見る表情だった。


「・・・俺が・・・怖くないとでも思ってるのか?
自分を相手に否定されるのは俺だって怖い。お前からなら尚更だ。」


声音もアスランのものなのに、
いつもとは全然違う風に聴こえた。

いつものように、余裕などない。


軽く口元を上げて言葉を紡ぐ彼は、
独り言を言っているかのように言葉を紡ぐ。

無意識中の言葉のように
飾りや嘘がない。

・・・・何故だか解らないけれど、そう感じた。



「・・・・・だけど、に傍に居てほしいから、
今、君の傍にいるんじゃないか。
それくらい解ってくれているんだと思ってた。」

「・・・・っ」



酷く傷ついたような表情でを見ない
アスランに、は口を開こうとするが、

言葉が出てこない。

なんと声を掛ければいいのか、
なんと弁解すればいいのか、

今のには思いつくことができない。


自分とも向き合えていないのに、
彼の真っ直ぐな言葉に立ち向かえる術が
あるはずがない。


「自分は傷つかないポジションにいるくせに、
・・・俺の気持ちは否定どころか信じる事すらしないのか?
こんなに言っても、請うても、君はそれを嘘だというのか?
・・・・・・・・・・・・・・・あんまりだ・・・・っ」


アスランは唇を強く噛み締め、
俯き、強く目を瞑った。

自分の感情を必死で抑えようと
しているかのように。



ガタンッ

すくっと椅子からアスランは立ち上がる。

それには反射的に彼の腕を掴む。

だが、一瞬のうちに
たやすく払われてしまった。


「アスラ・・・ッ」


「悪い。今は君と一緒に居たくない。」


「!!」






ぱたんっ


静かにその部屋のドアが閉まる。


その瞬間、部屋は何も存在しないように
しー・・んと静寂を極めた。




ガタン・・・

は力の抜けた人形のように
崩れるように椅子へと座る。


「・・・・・・・」

目を見開いたまま、
その視線はどこにもいかない。

ただ何もない空間の一点を
呆然と見詰めている。



様々な感情が大きく大きく
膨れて、渦巻いて、

感情のバロメーターが振り切れそうだ。
完璧に容量を超えてしまっている。


どうすればいいのか、
今、どのような状況なのか。

・・・・判別がつかない。


物凄く泣きたい気分なのに、

今にも瞳から涙がこぼれても
おかしくないのに、


瞳が潤んですらこない。





とりあえず、一つ
わかることは、




彼を酷く傷つけてしまった、


ということだけだ。













     ねくすとすとぉりぃっ→


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いよいよです。

逆転おにごっこ!

アスランが少しは報われると
いいなぁと思いつつ・・・。

アスランは本当にヒロインの事が好きなのかしら?
とか私自身が今ふと思ったことに
驚いています。


・・・それ設定考えなさすぎじゃないですかね。





     2007/09/23
更新日 2007/11/14  惶月 奏(おうづきかなで)