『浮気は絶対に許しません。』


これ、あたしの
信条なんで。





コレヲ侵スモノ、死ヌベシ。


それって、
世界の常識でしょう?




どんなにえらかろうが、

本当の愛情を手に入れたかったら、
そのくらいしなきゃ、手に入らないよ。









ス・キャ・ン・ダ・ル
【中編】










ドンドンドン!!


鳴り響く、ノックの音。


しかし、そのドアは開く気配さえ、
見せなかった。



!!・・・いるんだろう!?
・・・開けて・・・開けてくれ・・・!!」


しかし、そんなアスランの叫びは
空しく、応答がない。


もう、かれこれ一時間は
叩き続けている。


しかも、力いっぱいノックしている為、
アスランの手には、うっすらと血がにじんでいる。


!!!・・・・・頼むから!!
話を聞いてくれ!!」


≪・・・・・・・・・・・・・≫


しかし、通信機からはうんともすんとも
聴こえてこない。


「・・・・・・・・・・・・っ」



当たり前だ。

・・・・俺は彼女を
二度も裏切ったのだから。


確かに、ラクスとは14歳の時から
会っていた。

そして・・婚約者・・・・だという事も
うっすら父から聞かされていた。

俺は、元々恋愛ごととか
冷めていて・・・・


ラクスに会いにも、父上の命令だから
ただ行った・・・という感じだった。


まさか、自分がこんなに
誰かを好きになる・・なんて

思ってもみなかった。


今になって、その頃の行いが
悔やまれる。


何故・・・何故、好きでもないのに、
婚約者になるという話を断らなかったんだろうと。






・・・・ッ!!頼むから・・お願いだから
開けてくれ!!!」


通路に、アスランの声が響く。

だが、それ以外の音も・・・・声もしない。


「・・・・・・・・・・・っっ・・・このまま
諦められるわけないだろ・・・っ」

アスランは憎憎しげに
呟き、ポケットからミニハロを
取り出した。








プッシューーー


そんな音と共に、ドアが開く。



廊下の光が差し込んできて
眩しい。


は、ベットにすわり、
布団を被っていた。


電気もつけずに。




「・・・・・・・・・・」



は勝手に開いた
ドアのほうを目を細めて見た。


くらんだ目は姿を判別することが
出来ないけれど、

声でわかる。


・・・・いや、ここにくる人は
一人しか居ない。


「・・・・不法侵入なんだけど。・・・」


私は、掠れた・・・小さな声で
呟く。

その私のセリフに
アスランが少し笑ったのが解った。


・・・」

今は、その声とセリフを
吐き気がするほど、聞きたくない。


「慰謝料もいらないから・・・
出て行ってくれる?」

「・・・・・・・話を・・・」



「ラクス嬢と会っていたのは事実?」


「・・・・・・・あぁ。」


「私と会う前から。」


「・・・あぁ・・・。」


「なら、話すことなんてない。」


「・・・・・・・・・っっ!!待ってくれ!
俺は・・・・・・・・・・」


アスランは勘気あまって
ベットに近づき、彼女の肩を掴む。

それにびくっと
の体が震えたのが解った。




「触らないで!!!」


ドンッッ


今まで彼女にこう言われてきたことは
多々あった。

突き飛ばされた事も。

だけど、今回のは、
全く違う。


これは・・・・・
本当の拒否反応だ。


俺を受け入れていないんだ。


心も・・・・・体も。





「もう・・・・・・やだ・・・・っ」

が震える声で
呟いた。

いや、泣き出した・・・という
方が正しい。


「・・・どうして・・・っ・・・婚約者が
いるのに・・・・どうしてよ・・・・っ」


解ってる。

君がそう思うのは当然だ。


誰よりも、純真で、一筋で真っ直ぐな
君だから。


・・・・・・・騙した・・・ことになるんだろう。

だけど、「愛している」も「君だけだよ」
今までに君に言った言葉は、


すべて本物なんだ・・・・・・・





・・・確かにラクスとは婚約してる。
・・・・・・・・だけど、それは親同士の政略だ。」


「・・・・・・・ふっ・・・ぁ・・っ・・」


は俺のほうを一向に見ない。


彼女は布団を被ったまま
座って泣いている。

こんなに弱々しい彼女を
見たのは初めてで・・・・


抱き締めたかった。



今すぐに、
本当は、抱き締めたかった。


だけど・・・・・・・・

今の状況でそんなことをしたら
彼女は本気で俺を拒絶するだろう。


だから、
その衝動を必死で抑えた。


今は、すべき事がある。







「・・・・・・・もちろん、俺が君に言った言葉に
嘘なんか一つもない。ラクスにも・・・ちゃんと断ってある。」


その言葉にの体がぴくっと
反応したのが解った。


「・・・・は俺の事なんか許せないと思う。
・・・・だけど、俺はそれじゃ生きていけない。」


「・・・・・・・・・・・」


「食堂で君に殺された方がマシだ・・・
と言ったのは、本当なんだ。」





「・・・・・・・ねぇ・・・・・・」


アスランの声がだんだん
弱々しくなる。

それでも、彼女からの
反応はない。


「・・・・・・・俺を・・・拒絶しない・・でくれ・・・っ」


小さく震える声と共に
へと手を伸ばす。


・・・・・・・・・・・・・・が。


ぱしっ!


その一世一代の勇気は
容易く払われてしまった。


「・・・・・・・・・・っ」


もう、自分の事は
恨みや嫌悪の対象としか思っていないのか。




それにアスランもショックを隠しきれない。


(解ってる・・・俺はそれ以上に彼女に
ひどいことをした。)


そう、受け入れてくれ・・・という方が
傲慢なのだ。





だけど・・・・・・・




だけど・・・・・・・・っ





「・・・・・・・・・・っ・・・」




彼女の前で泣くなんて
・・・・あまりにもみっともない。


・・・・そんなこと解っている。


解っているけど・・・っ


涙が溢れてきて。



それでも、ここから立ち去ったら
本当に・・・・本当に終りで・・・・・・・・・・・・



その結果、アスランは
床に崩れて、必死で声を抑える事しか
できなかった。



(情けない・・・これじゃ、彼女に拒否されても・・・
当然だ。)








「アスラン・・・」

「!?」


アスランは突如、前から紡ぎだされた
声に目を見開き、顔を上げる。


そこには、布団を
頭からおろし、肩にかけた彼女がいて・・・・


そして、悲しそうに・・・・・
だけど暖かく・・・微笑んでいた。



・・・・ッ」


アスランはそんな
ぱぁっと顔を輝かせて、


抱き締めようとするが・・・





「触るな、馬鹿。」

そう一喝されてしまった。



「・・・・・・・・・っっ」


これには防御柵を張っていなかった
アスランはかなりのダメージを受けるが・・・



「アスラン、私と別れたくない?」


その問いかけに、アスランは
やや顔を明るくさせる。

そしてぶんぶんっと縦に
顔を振った。


「・・・・・・・・・・・・・そう。」

はそれだけ呟くと・・・・・・・・


ぱちっ


傍らに置いてあるテレビの
電源を入れた。


それには、アスランも
きょとんとする。


そして、そんなアスランを
は世にも怖い微笑を浮かべて見る。


これには、流石のアスランも
背筋がぞっとしたとか、してないとか。




そして・・・・・・・・・・




「このテレビに今日中にラクス嬢との
婚約破棄が流れなかったら、本気で終わりね。」


と微笑んだ彼女に
彼は目を見開いたが、


すぐに走り出した。





・・・・・・・・・・が、ぴたっと
扉の所で止まり・・・・・



「・・・・・・・・・・・・俺が・・・ザラの名前を捨てる
事になっても・・・・・・は俺を愛してくれるか?」


の返事を聞くのが
怖いのか、後ろを向いたまま
アスランはそう問いかけた。


『ザラ』という名前が欲しくて
・・・そこが狙いで、近づいてくる者も
少なくない。

もちろん、がそうじゃないことは
解ってる。


・・・・・・・・だけど、
やはり『ザラ』という名前は大きい。



名誉や・・・財産は・・・
ないよりは、あたっほうがいいだろう?


もし、彼女が、ソレを含めての
『俺』と付き合っていたのだとしたら・・・・。






すると、後ろで溜息が
聞こえ・・・・・・・


「・・・・愚問ね。私は『アスラン』だから
愛しているのよ。『ザラ』の名前じゃない。
・・・・大丈夫、
私が養ってあげるわ



そのセリフは
アスランの躊躇いを全て・・・


そう、全てを断ち切った。








時計が打ち出す
文字は10:30。


タイムリミットまで
あと1時間半だ。














後編へオールグリーン!!(いい加減にしろ・・ですか。)




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なんなんでしょうね・・・これわ。
(多分、それは皆が聞きたい。)


     2006/07/02   惶月 奏